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管理人がその時々で気に入った萌えを綴っていけたらいいなと思います
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3週目。

最初シリアスだけど大丈夫これギャグだから。

オチがちょっと甘かった気がします。反省。

次週結婚シリーズラストの予定なんだが、構想しかできてないんだ・・・・(汗)


教会の鐘が鳴る。


結婚という、若者二人の新たな門出を祝福する鐘の音だ。
 

花嫁の名はリタ=モルディオ。
彼女は傍らに寄り添う伴侶と共に笑いながら階段を降りていく。
 

その周りを彼らを良く知る人たちが囲み、心から二人の門出を祝福する言葉を投げ掛ける。
それに応え手を振る二人。
 

雲一つない空の下で行われる、なんとも幸せな情景がここにあった。



その光景を遠くから見つめる男が二人。
一人は柱を背もたれにして立っていた。もう一人の男は床に座り込み、周りには祝杯のワインボトルが数本転がる。
「良かったのか?おっさん」
「良いも何も。若者の幸せをおっさんは祝ってるじゃないの」
 

肩を竦めておっさんと呼ばれた男、レイヴンはまたワインをグラスに並々と注ぎ呷った。
 

「良く言うぜ、好きだったくせに」
「そんなこと言っていいの?今日の花婿は青年の相棒でしょうが」
それとも、おっさんに略奪愛でも唆かすつもりかい?と鋭い口調で続けたレイヴンにユーリは黙り込んだ。
相棒の幸せも大切だがレイヴンの幸せもまた大切である。その考えをどう言えばこの目の前の男に伝えられるかを考えたからだった。
 

だがレイヴンにとってみれば、リタの幸せだけが重要なのであって自分は二の次なのだろう。
何人たりともリタから幸せを奪うことは許さないのだ。
 

ユーリは、リタが無意識にレイヴンに惹かれていたことに気づいていた。それは遅かれ早かれ愛と呼べるものに育つだろうとも。
そしてレイヴンは、リタに好かれていることを知っていた。レイヴンもまたリタを愛し見つめていたからだ。
だがレイヴンは自分の想いに蓋をした。リタを徹底的に「仲間」として扱い、彼女を女として見るそぶりを一切見せなかった。



対象外という言外の宣告に恋心の破れたリタは、失恋の最中リタを献身的に支え、辛抱強くリタが立ち直るまで待っていたかつての仲間に求愛された。
それから紆余曲折あった後に二人はつき合いはじめ、本日めでたく結婚式を挙げるまでの関係へと成長した。
 

リタにとってかつて恋をしていたレイヴンは、今となっては大事な仲間以上の感情はない。
 


これからリタが愛を捧げる男性は伴侶一人だけ。それ以上の人を心に抱えるなんて器用な真似はではできないのだ。
かつてはレイヴンのものだった恋心が再び燃え上がることは決してないだろう。踏みつぶし、消したのはレイヴン自身なのだから。
 


こぼれたミルクは戻らない。
リタはレイヴンを愛さない。


 

花婿は誠実な男だ。
決してリタを裏切らず、守りぬくだろう。
それは長年苦楽を共に過ごしてきたユーリが一番よく理解している。
 

しかしこうも思うのだ。
もしもレイヴンが己の欲するままに行動していれば、リタの隣で祝福されていたのは彼だったろうにとも。
 


「おっさんにリタっちは眩しすぎたのよ」
ぽつりとレイヴンが呟いた。
その姿に普段みせる道化じみた動作はなく、遠くどこかここでない場所を見つめていた。
「遠くから見られるだけでいい。それ以上近づくのは怖かったんだ」
「だから逃げたのか」
「・・・・ああ」



馬鹿な男だ。
 

だがユーリには彼を笑う気にはなれなかった。
 

彼女が幸せであればいい。
光を歩く彼女に自分はふさわしくないから、仲間くらいの距離が一番良いとそう想う気持ちを自分も痛い程理解できるからだ。
 

「リタが幸せだったら俺は幸せだ。でも俺じゃリタを幸せにできないんだよ」
 

グラスに注ぐことすら億劫になったレイヴンはボトルに口を付けて直接中身を煽る。
「だから」
ユーリには口の端から一筋垂れた赤いワインが血のように見えた。
「これでいいんだ」
血を吐くような調子で呟いた瞬間、リタが花婿に恥じらいながらくちづけをした。途端にわあっ、と大きな歓声があがる。
 

「いいんだ」




 

ブーケが空を舞う。

 



 

 

 

「・・・っていう夢をみたんだが」
と、ユーリが言った。
「ちょっと勝手に人を失恋させないで頂戴よ!!!」
一通り話し終わるのを待っていたレイヴンが抗議した。レイヴンの家を訪ねてきたと思ったら突然物語を始めたからだ。しかも妙にリアリティのある設定だから恐ろしい。なにその短編小説でありそうな悲恋。
「なんなのよ、その不吉すぎる夢。しかもそれを本人に言う?おっさん繊細なんだから勘弁してよね」
「人に言ったら正夢になんねーっていうしさ、こうなるなよって意味も込めておっさんに言うことにした」
「あーそれはありがとうよ!全然うれしくないけど」


「だいたいさあ、花婿がフレンちゃんってどうなのよ。相手がもういるでしょ」
「・・・俺は相棒とは言った。が、フレンとは言ってないぜ?」
「へ」

フレンではないけれど、相棒。
ユーリと長年つきあいのある、凛々の明星のメンバーといえば。
連想できるのはひとりだけ。

「・・・ってことは」
「ああ」
重々しくユーリは頷いた。
「ラピードだったんだ」

ラピード。
(たぶん)犬。意志疎通もばっちし。
犬ご飯になるけど料理できる。
道具を器用に使うし、戦闘もこなせるナイスガイ。
空気読みが異常に上手い。
むしろラピードっていう生き物。
TOV界きってのいい漢と名高いあのラピード。

「現実にならないように気をつけるんだな」

いくらなんでもラピードにリタをかっさらわれるのは嫌すぎる。
仲間としてみるならこの上なく頼れる存在なのだが、想い人を2回連続で色物に取られるのは、人として、なにか大事なものを亡くす気がした。
とりあえずレイヴンとしては、こう答えるしかなかった。


「ドリョクシマス・・・」

 

 

レイヴンは思った。
明日リタに会いに行こう。
そしてプロポーズをしようと。

 

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