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2週目。
名前に反してシリアスです。
「リタっち、これ欲しくない?」
明日何食べたい?とでも言うような軽さでおっさんは自分の心臓魔導器を指さしてあたしに尋ねる。
口の端は上げてへらへらと笑っているように見えるけど、目が本気だった。
要るっていったら本当に抉りだしそうな予感がするんだけど。
こうやってそのつもりはなくともあたしを試そうとするんだから、こいつは本当に心臓に悪い。
「欲しくない」
「およ?リタっちの好きな魔導器よ?しかも現存して稼働する最後の一つっていう超レアもの」
「その子はね、あんたにくっついているときが一番輝くのよ。その子からあんたを取り上げてどうすんのよ」
「なるほどー。深い」
「それに」
ごくり、と唾を飲み込んだ。
これから告げることは賭だった。
おっさんの言葉の意味が、あたしの思うとおりならばあたしの勝ち。
おっさんが生きるのに飽きて魔導器をくれようとしてるだけならばあたしの負け。
魔導器だけで我慢すればいいなんて冗談じゃない。
あたしは強欲なのだ。
一部なんかじゃ物足りないの。
だから全部頂戴。
「どうせなら魔導器の持ち主ごと寄越しなさい」
「・・・・」
「あんたがその子を嫌うなら、あたしがその分まで愛してあげる。ううん、愛させて欲しいの」
「・・・・返品不可よ?」
「当たり前でしょ」
「・・・・リタっちて、格好いいわあ」
腕を組んで仁王立ちするあたしにおっさんはあーとかうーとか唸ったあとに頬をかきながら答えた。
「なんか、プロポーズみたいね」
「それ以外の何物でもないけど」
茶化そうとした言葉に即答する。
ここまできたら素直に言うことにした。ここで意地を張ったら一生後悔するもの。
たぶん正気に戻ったら死にたくなるけど考えないことにした。
「その代わりあたしをあんたによこすわよ。勿論返品不可だからね」
「・・・・・」
「な、なによその目は」
「おっさん、一生リタっちに負けっぱなしな気がしてきたわ」